レモンをおく Version2


     ゆめのかたちをもとめるように
     手のひら風にかざした
     きみの白い頬を
     五月の影が染めていく

     
     桂の葉が日射しにひるがえって
     あたりは一瞬の喝采に満たされ
     きみはすこし わらって
     合せ鏡にはまりこんだ時のなかへ
     つま先踏み入れた気になっていた
     
     手にしたはずは レモンの形
     あの 夏の初めの永遠
     
     それから
     海からのつめたい風が季節を送ってくる
     この街に佇って
     石壁の部屋からの青空にひたされた眺めを
     あくがれた時間の長すぎさ
     
     ことしも 桂の樹が甘く香って
     見上げる空に 涙のようなきみの手まねき
     おいてきたことの多さと
     忘れつづけてゆくことの一つ覚えが
     僕を追いかける

     掌に欠片のレモン まもって
     どれだけ行けるのだろう

     夏よ どうか僕へ
     そして歌を


                    草原 遙  2003.8.6.